
「赤ちゃんがお母さんの歯をカルシウムとして吸い取るから、妊娠すると歯が抜ける」
そんな「それっぽい理由付き」の話が、昭和以前では非常によく語られていました。
今でこそ迷信として語られることが多いものの、当時の人がその言葉を信じたくなる背景には、「妊娠時特有の口腔内の変化」がありました。
「妊娠=歯が抜ける」というのは都市伝説ですが、そう思ってしまうだけの根拠はあった、ということです。
今回は、この噂がなぜ広まったのかに始まり、妊娠中に起こりやすい口腔内トラブルについて触れていきたいと思います。
実は、日本だけではなく海外でも似た言い伝えがあります。
例えば、英語圏には、“Gain a child, lose a tooth.”という言葉があります。
直訳すると、「子供を一人得るには、歯を1本失う」という意味。
世界的に、同じような認識があったと分かります。
特に昭和以前の日本では、妊娠・出産を経た女性が歯を失いやすく、栄養不足になりやすかったり、口腔ケアが広く普及していなかったというような社会背景から、「妊娠=歯が弱る、抜ける」という経験則が噂として語られるようになったと考えられます。
「赤ちゃんが母親の歯からカルシウムを奪う」という事自体は誤りですが、妊娠すると歯周病のリスクが上がり、歯周病が進行すると歯がぐらついたり抜けてしまうことになります。
そのため、「妊娠すると歯が抜ける」は飛躍している迷信ではあるのですが、「妊娠中に歯を失うリスクが高まる」というのは一部事実ではあるのです。
では、「妊娠中に歯を失うリスク」になり得る口腔内トラブルについてまとめていきましょう。
妊娠が口腔内に影響を及ぼす原因として特に挙げられるのは、次のようなものです。
妊娠中は、女性ホルモンの一種であるエストロゲン、プロゲステロンの分泌が大幅に増加します。
エストロゲンは女性らしさをつくるホルモンで、生殖器官を発育、維持させる働きをもっており、丸みのある体形をつくる作用もあります。
プロゲステロンは妊娠に適した身体をつくる働きをもつホルモンです。基礎体温の向上や、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を安定させる働き、乳腺を発達させる働きがあります。
このような妊娠・出産に向けた身体づくりを進めてくれるホルモンですが、これらのホルモンは、歯周病の原因となる菌の増殖を促したり、歯茎の血流や免疫を変化させたりする働きがあると言われています。
そのため、結果として、歯茎が腫れやすくなったり、出血しやすくなったりする環境ができやすくなってしまいます。
妊娠期にみられる「妊娠性歯肉炎」の原因の代表例は、このホルモン変動なのです。
つわりが起きる時期は、歯ブラシを口に入れると吐き気を感じたり、匂いや味に敏感になり水や歯磨き粉を受け付けられなくなるなど、普段の歯磨きが難しくなりやすい時期でもあります。
歯が磨けない日が増えれば、歯垢が溜まり、歯周病が進み、むし歯ができやすくなります。
妊娠中は、空腹で気分が悪くなる、少量ずつ何度も食べる、甘い物を欲しやすいといった食生活の変化がよくみられます。
食事回数が多いと「お口の中が常に酸性状態になりやすい」ため、むし歯菌が増えやすく、唾液による再石灰化(歯を修復する働き)も追いつきにくくなるため、むし歯リスクが高まります。
また、唾液の量や性質が低下もよく起こる症状です。
これにより、つわりや体調変化により、唾液が減る、歯の汚れを洗い流す力が弱まる、口が乾きやすいといった症状が起こります。
その結果、むし歯や歯周病のリスクがさらに上乗せされます。
上に挙げたような原因により、歯周病が発症・進行すると、歯を支える歯茎、歯根膜、顎の骨が炎症で弱り、「歯が揺れる」「噛むと痛い」「歯茎から血が出る」といった症状が現れます。
特に妊娠中は炎症反応が出やすいため、まだ大きな骨吸収が起きていない段階でも一時的に歯がぐらつくことがあるのが特徴です。
その状態を昔の人が見て、「妊娠すると歯が抜けるんだ」と感じたのが、「妊娠したら歯が抜ける」という迷信が広まった理由の一部だと考えられています。
多くの場合、妊娠期の歯茎の腫れや揺れは、適切なブラッシングや歯科受診によるプロフェッショナルケアで改善できます。
放置すると本当に歯を失うリスクもあるため、「症状が軽いうちの相談」が非常に重要です。
では、このようなトラブルを予防するためには何をすればよいのかをご紹介します。
無理をして吐き気を悪化させるのは逆効果です。
ヘッドが小さい柔らかいブラシや子ども用ブラシなど、吐き気が起こりにくい歯ブラシを探すのも一手です。
また、歯磨き粉もミント風味がきつくないものを選ぶなど、自分の負担を減らせるものを探しましょう。
どうしても歯が磨けない日は、水や薄いお茶、ノンアルコール洗口液で口をすすぐだけでも、いくらか食事の酸性・汚れをリセットできるというメリットがあります。
ダラダラ食べを避ける、食後に水かお茶で口をすすぐ、間食はキシリトール入りガムやチーズなども活用などにより、負担を軽減できます。
丁寧なブラッシング、歯間ブラシ・フロス、歯科医院でのクリーニングは、妊娠期だからこそ価値が高まります。
結論から言うと、妊婦さんの受診は全く問題ありません!
寧ろ、痛みや腫れを放置すると歯肉炎・歯周病が進行することになり、口腔内が不衛生になります。
この方が母体・胎児に不利益になるため、妊娠中の歯科受診が推奨されます。
この時期は、体調が比較的安定し、仰向け姿勢も苦しくなく、薬の使用にも柔軟に対応できるため、虫歯や歯周病の治療・メンテナンスを行うには最適な期間となります。
妊娠初期や後期でも、応急処置や症状緩和が見込めますので、辛い症状は我慢せずに、まずは相談してください。
彩都西歯科クリニックでは、妊娠期に配慮したクリーニング、歯周病・虫歯のチェック、つわり時のセルフケア指導、使ってよい薬や処置についての説明など、妊婦さんが安心して治療に臨める体制をご用意しています。
口腔内の健康は、妊娠中の生活の質(QOL)にも影響します。
「出産が落ち着いてから……」と思って症状を放置すると、産後の育児が忙しい時に、もっと大変な治療が必要になることも珍しくありません。
もしご不安なことがあれば、ぜひお気軽に当院へ。
スタッフ一同で、ご来院をお待ちしております。
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